「BEWITCHINGTALE」、「BEWITCHINGFELL」

自AU「BEWITCHINGTALE」、「BEWITCHINGFELL」の小説を載せています。

BEWITCHINGFELL もう1つの√

「BEWITCHINGFELL」

~貴方と再び歩む事が出来たなら~

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花の香りに包まれながら目を開ける。確か自分は…と思うフリスクだったが今またこうして最初の場所にいる。それは確かなのだ。

首に巻いてあるスカーフも服も綺麗だ。

でも何か足りないような気がする。




あの時の記憶を辿りフラウィを助けトリエルを落ち着かせた。


フラウィはどうしてこんなにあっさりと恐ろしいトリエルを落ち着かせたのか分からないといった表情をしていた。


遺跡を出て雪道を歩き橋の前に立つ。後ろからやってくる足音。振り向けばそこには彼がいた。


「おっと、これは驚いた。何も言ってないのにこっちを振り向くとはな。唯一正常に見える人間さんよォ」



彼は驚き、その拍子に首から下げていた鐘も小さく鳴る。


フリスクはその鐘を見た。これと似たような物を知っている気がしたのだ。


「それ…!私はそれを見たことがある…!」


フリスクは少し不安げな彼の手を取り、ニッコリと笑った。


「会いたかった…!シアト!」


「おい、なんで俺の…うおっ」


「わあっ!ちょっとどうしたのフリスク!?」


フリスクはシアト…に抱きつく。いきなりの事でバランスを崩し倒れる2人。


シアトは何が何だか分からないと言いたげな顔をしのしかかっているフリスクを見つめた。


歪んでいく視界にハッキリと見える人間。名前をフリスク。ハッキリとは覚えていないが前にどこかで会ったような気がする。


(あの時笑っていなかった彼女が笑っている)


彼女と出会ったのは初めてなのに何故かそんな気持ちがぼんやりと湧き上がる。


彼の弟、レーゼはその兄と人間の言動を見ていたがお構い無しに歩いていく。


「おい、お前。俺の愚兄に何をしている?」


フリスクは振り向いた。大きな骨を持ったレーゼが凄まじい殺気をこちらに向けている。


前にやられてしまった骨攻撃も今なら避けられそう。そんな気がした。絶対に避けてみせるという決意を抱きレーゼに向かう。



ーーーーーーーー



「貴様は弱い!そこでフラフラしている愚兄より弱い!」


レーゼにビシッと言われてしょぼんと落ち込むフリスクとフラウィ。シアトはフリスクを見ている。



「だがその勇気と決意は見事なものだった。…この先に進みたいなら俺達の家で休んでからいけ。」



レーゼはそう言って去っていく。シアトはあー、うー、と唸っている。


「あのボスが他人を家に招待するなんて珍しい事もあるんだな」


そうなの?と言うと彼は頷いた。


「まあいいや、着いてきな」



シアトはフリスクと歩く。フリスクはシアトの手を握った。彼は酷く驚いた。そんな顔をして驚く顔、初めて見たなとフリスクはフラウィを肩に支えながら思うのだった。




ーーーーーーーー


あの後彼等の家に招かれたフリスク達は楽しく奇抜とした遊びや食事を楽しんだ。フリスクの慈愛の心は彼等を平常に戻していく。


そして次の日。


「ありがとう、色々教えてくれて…えーと…」



「俺はパ…じゃない…ピプレーゼ。レーゼと呼んでくれ」



「うん!レーゼの言う通り真っ直ぐ歩いて洞窟に向かうよ」



「気をつけてな」


レーゼは軽く手をヒラヒラと振る。すると後ろから大声が響く。



「フリ!」


シアトはフリスクの前まで走る。


「俺も一緒に行ってもいいか?」


フリスクは驚いた。シアトは自分からこんな事は言わない筈だ。やはり、彼も覚えているのだろうか。

フラウィは怯えて隠れてしまった。震える振動が伝わる。


驚いたと同時にフリスクは嬉しくなった。シアトと一緒なら心強いと。


「いいよ」


手を差し伸ばすと握ってくれた骨の手を握り返す。



フリスクはその手を離すと1つの鐘が手にあった。



「これ…」



「知っている…と言ってたからこれの事じゃないかと思ったんだ」



前の自分が着けていた小さな鐘。それをぶら下げるとチリン、と小さく音を鳴らす。


「行こう」



そう言って2人は歩き出した。

洞窟を抜け、地上に出る為に。



BEWITCHINGFELL もう1つの√

後半へ続く。

「BEWITCHINGFELL」後日談

フリがいなくなって数日が経った。ボスは相変わらずアンダインと喧嘩してるしアルフィーは何してるのか分からない。トリィは変わらず皿洗いをしているがその心は穏やかでは無いはずだ。アズゴアは慣れない仕草で草抜きをしている。

フラウィもアズゴアを手伝っていた。

フリがいなくても起こっていた日常のはずだった。なのに、なんだろうな。ソウルが苦しい。フリがいなくなったのがこんなにも辛かったなんて。あの時の動かなくなったフリは…笑っていたようにも悲しそうにも見えた。


慈悲を示したフリによって多少は殺伐としてはない。


そして彼女の決意が宿った俺の鐘はあれから静かに光っている。


そしてまた今日もお墓参り。夕陽がよく見える丘の上に立てられたお墓。墓標には「FRISK」という文字が。


「今日もきたぜ、フリ。お前がいなくなって、俺は変な気持ちが拭えないみたいだ。…もっと早く気づいていればよかった。殺伐としたあの世界はお前がやって来てから随分丸くなっちまったもんだ。」



そう言うと彼は墓にトリエルが作った花の冠を乗せた。夕焼けの光によって花の冠と墓は山吹色に光る。


辺りが薄暗くなる。彼は戻ろうと振り返った。


「フリ…?」



少し遠くの場所でフリスクが、笑顔で立っているのだ。彼は思わず駆け出した。フリスクは後ろへ向き歩いていく。


「フリ!待て!俺だ!……だ!」


彼は走るのは少し苦手だったが今回はそうは言ってはいられなかった。


追いついた。彼は確信し手を掴む。


掴んだ筈だった。



「…?」



掴んだのは、空虚だった。



「なんだ…?…俺も、フリと同じように幻惑を見てしまったというのか…?」



彼は墓を見つめた。


「フリ、近くにいるのか?」



(ここにいるよ…)




「…!」



風が、そう言ったように聞こえた。



「ハハ…ダメだな俺は」



彼は自身を嘲笑しながら戻る。



(…)



(…もし…)



(もし、フリが持っていた「決意」というやつがまだ残っているなら)


「どうしたいの?」


「!」



振り返るとフリスクに似ている子供が立っていた。また一瞬驚いたが、違う服を着ているしあんなにも不気味な笑みは浮かべてはいないと思いその考えは捨てた。


「あの子は違う世界のキミから受けた呪いを背負って歩き続けた。君の望みは分かっているつもりさ、キミたちがいるこの世界は私が作った箱庭だからね」



「は?てめぇ誰だ?何を言っている」



クスクスと笑いながら人間は答える。



「モンスターと仲良くなった筈だった違う世界の彼女が彼等を殺戮した結果受けた幻惑という呪いは決意をすると同時に酷くなり更に死ねば死ぬ程寿命を縮めてしまう、極めて恐ろしいものだ。」


「私は彼女を哀れだと思ったよ。そして申し訳ないと思っている。今ここを見ている者によって本来ならなかったものを背負わなくてはならなかったのだから。」



「そして、君は彼女に会いたいと願っている。違うか?」



シアトは頷く。人間はやはりと言わんばかりの目を向ける。


「取引をしようか。彼女に会わせてあげよう。ただし、君は1つあるものを犠牲にしないといけない」



「なんだと…?何を犠牲にすればフリに会えるんだ!?」



「落ち着きたまえ。そうだな…彼女は呪いから解放されるがその呪いは君が背負うという事だ」



「呪いを俺に移す…と?」



人間は頷く。それを見た彼は口を開け答えた。


「俺は…」




それから数ヵ月後。




暗い暗い闇の底で

1人の人間が、目覚めた。





「BEWITCHINGFELL」後日談 完

「BEWITCHINGFELL」最終話

「BEWITCHINGFELL」最終話


ロードしますか?


はい◀

いいえ




「はは、君は…僕にも救いをくれるというのかい?…残念だけどそれを受け取るには遅すぎたんだよ僕は…」


コアの奥で待ち構えていたステージに立つ3人とメタトンの番組はメタトンの四肢切断の状態により終わりを告げた。


「いっその事、ボクを」


「そうかよ」


言い終わる前にシアトは鋭い眼光を向けると共に骨を飛ばす。それはメタトンのコアを貫いていた。



破壊されたメタトンを見つつエレベーターへと向かう3人。後ろから悲鳴が上がったのが聴こえたがシアトはフリスクの手を強く握ってフリスクの意識をこちらに持ってこさせた。



「いよいよ、アズゴア王の所に行くの…?」


フリスクは不安でいっぱいだった。前よりも酷くなっている幻惑にかきたくもない汗をかいている。フラウィーの声も分からなくなりつつある。フリスクはシアトの手を両手で握った。


エレベーターから降りて歩くと見た事のある家にたどり着いた。だが、フリスクが見てる景色は前よりも更に酷くなっていた。その為か足取りがフラフラとしている。見てられなかったシアトは再びフリスクを横抱きにする。歩く度にお互いの鐘の音が鳴る。



「シアト…怖いよ…暗いよ…一緒にいて欲しい…」


「俺が付いてる」


フリスクは彼の服を掴み顔だけを見る事にした。



「フリスクは僕達が守るから」



フラウィーの小さな決意は、シアトは見聞きしていたが悲しい事にフリスクには届かなかった。



「これをもっとけ。護身用だ。フリスク」



やがて黄金色に輝く回廊に出る。フリスクは横抱きにされながら力が抜けていくのを感じていた。幻惑によって削られた生命は、もう長くはないかもしれない。それを薄々とかんじてはいたが、黙っていた。


「ありがとう、シアト…ここからは歩いて行くよ」


「ダメだ、俺はまだこうしていたい」



こうしていたい。フリスクはシアトの言葉で動く事が出来なくなった。シアトの顔が少し赤い。最初はお互い理解も何もなかったが、今はフリスクだけだろうが彼の事は信頼出来ると判断していた。





「…来たな」


黒い髪、赤い瞳、そしてとても大きな身体。これが、アズゴア王。



その大きな身体から放たれる威圧感は見るものを圧巻させるのに十分だ。


「お前がアンダインやアルフィーが言っていた人間か」


「…!」


アズゴアの後ろには6つの色とりどりの魂が器に1つずつ入っている。赤い入れ物だけ何も入っていない。


何故だろう、上手く喋れない。言えることなら「はい。私は人間です。私は地上に帰りたいのです、なので先に進ませてください。」と言いたいのに。


「お前は…」


「アンタはこの世界はやるかやられるかと言っていたな。前まで俺はそれに従って楽しんでいたが、やめることにしたぜ」


シアトは続ける。



「コイツのおかげでな」



シアトはフリスクを見てニヤッと笑う。フリスクはそんなシアトに安堵した。


「お前達はこの先に進みたいとみた。だが、私を越えなければそれは無理な話だ」



「お前に、私を倒すことが出来るかな?」



フリスクはシアトに降ろしてもらい、震えながら護身用に貰ったナイフを握りしめ構える。そしてフラフラとした足取りで立ち向かった。



追いかけようとしたシアトは見た。フリスクが、アズゴアのもつ槍に貫かれていく姿を。シアトは手を伸ばし血だらけのフリスクを支えようとした。



フリスクは光に包まれて消える。あの時、ボスにやられた時と同じように。



フラウィーがポトンと落ちる。フラウィーは泣いていた。



「…」



アズゴア王の顔は崩れなかった。




「…あ」



フリスクは、あの回廊にいた。

柱を支えにして再び歩き出す。そしてまた戻ってきた。


アズゴアは驚き、シアトは駆け寄り、フラウィーはフリスクにしがみついた。


フリスクはアズゴアに精一杯の笑顔を見せる。アズゴアはそれを見て歯を食いしばった。


「何故…!笑顔なのだ!何故だ!!!」



アズゴアは炎を辺りに撒き散らす。シアトはフリスクを抱えて避ける。シアトは骨を飛ばしこちらに近づけさせまいとする。フラウィーも種を飛ばして撹乱する。


フリスクは2人が頑張って自分を進めようとしている姿を見て自分の中でこの戦いを乗り越えるという決意が満たされていくのをかんじた。



シアトはフリスクに呟く。

(俺達がなんとか奴を足止めする。望んではいないだろうが、トドメはお前が刺すんだ。そうしないと、進む事なんて出来ない)


フリスクはシアトを見つめる。シアトは真面目な顔をしていた。汗も酷く、今にも溶けそうな、自分の為に必死になってくれていると感じる顔をしていた。それが何だか申し訳なくて。


フラウィは種を飛ばしてアズゴア王の目潰しを始める。続けてシアトは大きな骨を出して足元に刺していく。


「今だ!行け!」



「うん…!ああぁぁぁああ!!」



フリスクはシアトの重力効果により高い位置から下へナイフを握りしめアズゴア王の所に落ちていく。ナイフはアズゴアの身体を斬っていく。



「は…はは…やった…」



ナイフでの攻撃が効いたのかアズゴアは崩れ落ちた。

フリスクも倒れるがゆっくりと立ち上がる。


「人間よ…お前が地上に帰るにはモンスターの魂が必要だ。知らなかったとは思うがお前は賢明な判断をとった。6つの魂も開放された…私の魂もじきお前の元へゆくだろう。…先へ進むがいい」



シアトはゆっくりと進むフリスクを見守っていた。そしてアズゴア王に尋ねた。



「アンタ、アイツを殺しただろ?そして何事も無かったかのようにまた戻ってきた事を知っているか?」



「…なんの事だ?」




アズゴアはゆっくりと消えていった。



開放された6つの魂とフリスクはバリアの部屋の前まで来た。


「あともう少し…」



フリスクはバリアの間の入口に手を伸ばす。



ドクン。


「あ……」


フリスクは倒れた。身体中の力が入らない。どうして。あと少しで帰れるのに。さっきのロードとアズゴア王に浴びせた一撃で殆ど持っていかれてしまったのだろう。


周りの景色はもうぐちゃぐちゃになってしまい正常には見えない。6つの魂はフリスクを囲んで見守っている。



薄れゆく意識の中でフリスクはこう呟いた。



「…シア……ト……」






シアトはふとフリスクに呼ばれた気がして奥へと向かう。今まで言おうと思っていた事を言おうとして。



「なあ、フリ…俺の…本当の名前、シアトじゃないんだ」




「フリ…?」



進んだ先にはフリスクは倒れていた。6つの魂は彼女の周りをクルクルと回っている。


「フリ、なあ、こんな所で倒れてどうするんだ、おい、返事を…」


頬を触って直ぐに離した。冷たい。フリスクは冷たかった。

フリスクの身体から赤い魂と光り輝く決意の光が出てきた。


その魂は彼の頬にくっついて名残惜しそうに離れていく。その決意の光はシアトの小さな鐘に吸い込まれていく。



「フリ…お前は…」


これは、戻れない死というものなのだろうか。普通ならまた何事も無かったかのように戻ってくるはずが、今ここにいて倒れている。



彼は冷たくなったフリスクを抱き上げバリアへ向かう。7つの魂と倒れたアズゴアの魂がバリアに反応しバリアに小さな穴が開いた。それを潜る。



地上に抜けたシアトはその光景に目を見開いた。


地上を綺麗に照らす太陽と、綺麗な太陽には似あわない焼け野原となった地上。彼はフリはここに帰りたかったのかと疑問に思った。いや、煙が立っているからこうなったばかりなのだろう。前はとても綺麗な場所だったのだろう。



「聞こえるか?聞こえなくてもいい、俺はシアトではない。偽りの名前でお前は呼んでいたんだ。俺の本当の名前は…」




その後の言葉は後ろからやってくる他のモンスターの音と風の音で掻き消えた。




「BEWITCHINGFELL」完。