「BEWITCHINGTALE」、「BEWITCHINGFELL」

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「BEWITCHINGFELL」最終話

「BEWITCHINGFELL」最終話


ロードしますか?


はい◀

いいえ




「はは、君は…僕にも救いをくれるというのかい?…残念だけどそれを受け取るには遅すぎたんだよ僕は…」


コアの奥で待ち構えていたステージに立つ3人とメタトンの番組はメタトンの四肢切断の状態により終わりを告げた。


「いっその事、ボクを」


「そうかよ」


言い終わる前にシアトは鋭い眼光を向けると共に骨を飛ばす。それはメタトンのコアを貫いていた。



破壊されたメタトンを見つつエレベーターへと向かう3人。後ろから悲鳴が上がったのが聴こえたがシアトはフリスクの手を強く握ってフリスクの意識をこちらに持ってこさせた。



「いよいよ、アズゴア王の所に行くの…?」


フリスクは不安でいっぱいだった。前よりも酷くなっている幻惑にかきたくもない汗をかいている。フラウィーの声も分からなくなりつつある。フリスクはシアトの手を両手で握った。


エレベーターから降りて歩くと見た事のある家にたどり着いた。だが、フリスクが見てる景色は前よりも更に酷くなっていた。その為か足取りがフラフラとしている。見てられなかったシアトは再びフリスクを横抱きにする。歩く度にお互いの鐘の音が鳴る。



「シアト…怖いよ…暗いよ…一緒にいて欲しい…」


「俺が付いてる」


フリスクは彼の服を掴み顔だけを見る事にした。



「フリスクは僕達が守るから」



フラウィーの小さな決意は、シアトは見聞きしていたが悲しい事にフリスクには届かなかった。



「これをもっとけ。護身用だ。フリスク」



やがて黄金色に輝く回廊に出る。フリスクは横抱きにされながら力が抜けていくのを感じていた。幻惑によって削られた生命は、もう長くはないかもしれない。それを薄々とかんじてはいたが、黙っていた。


「ありがとう、シアト…ここからは歩いて行くよ」


「ダメだ、俺はまだこうしていたい」



こうしていたい。フリスクはシアトの言葉で動く事が出来なくなった。シアトの顔が少し赤い。最初はお互い理解も何もなかったが、今はフリスクだけだろうが彼の事は信頼出来ると判断していた。





「…来たな」


黒い髪、赤い瞳、そしてとても大きな身体。これが、アズゴア王。



その大きな身体から放たれる威圧感は見るものを圧巻させるのに十分だ。


「お前がアンダインやアルフィーが言っていた人間か」


「…!」


アズゴアの後ろには6つの色とりどりの魂が器に1つずつ入っている。赤い入れ物だけ何も入っていない。


何故だろう、上手く喋れない。言えることなら「はい。私は人間です。私は地上に帰りたいのです、なので先に進ませてください。」と言いたいのに。


「お前は…」


「アンタはこの世界はやるかやられるかと言っていたな。前まで俺はそれに従って楽しんでいたが、やめることにしたぜ」


シアトは続ける。



「コイツのおかげでな」



シアトはフリスクを見てニヤッと笑う。フリスクはそんなシアトに安堵した。


「お前達はこの先に進みたいとみた。だが、私を越えなければそれは無理な話だ」



「お前に、私を倒すことが出来るかな?」



フリスクはシアトに降ろしてもらい、震えながら護身用に貰ったナイフを握りしめ構える。そしてフラフラとした足取りで立ち向かった。



追いかけようとしたシアトは見た。フリスクが、アズゴアのもつ槍に貫かれていく姿を。シアトは手を伸ばし血だらけのフリスクを支えようとした。



フリスクは光に包まれて消える。あの時、ボスにやられた時と同じように。



フラウィーがポトンと落ちる。フラウィーは泣いていた。



「…」



アズゴア王の顔は崩れなかった。




「…あ」



フリスクは、あの回廊にいた。

柱を支えにして再び歩き出す。そしてまた戻ってきた。


アズゴアは驚き、シアトは駆け寄り、フラウィーはフリスクにしがみついた。


フリスクはアズゴアに精一杯の笑顔を見せる。アズゴアはそれを見て歯を食いしばった。


「何故…!笑顔なのだ!何故だ!!!」



アズゴアは炎を辺りに撒き散らす。シアトはフリスクを抱えて避ける。シアトは骨を飛ばしこちらに近づけさせまいとする。フラウィーも種を飛ばして撹乱する。


フリスクは2人が頑張って自分を進めようとしている姿を見て自分の中でこの戦いを乗り越えるという決意が満たされていくのをかんじた。



シアトはフリスクに呟く。

(俺達がなんとか奴を足止めする。望んではいないだろうが、トドメはお前が刺すんだ。そうしないと、進む事なんて出来ない)


フリスクはシアトを見つめる。シアトは真面目な顔をしていた。汗も酷く、今にも溶けそうな、自分の為に必死になってくれていると感じる顔をしていた。それが何だか申し訳なくて。


フラウィは種を飛ばしてアズゴア王の目潰しを始める。続けてシアトは大きな骨を出して足元に刺していく。


「今だ!行け!」



「うん…!ああぁぁぁああ!!」



フリスクはシアトの重力効果により高い位置から下へナイフを握りしめアズゴア王の所に落ちていく。ナイフはアズゴアの身体を斬っていく。



「は…はは…やった…」



ナイフでの攻撃が効いたのかアズゴアは崩れ落ちた。

フリスクも倒れるがゆっくりと立ち上がる。


「人間よ…お前が地上に帰るにはモンスターの魂が必要だ。知らなかったとは思うがお前は賢明な判断をとった。6つの魂も開放された…私の魂もじきお前の元へゆくだろう。…先へ進むがいい」



シアトはゆっくりと進むフリスクを見守っていた。そしてアズゴア王に尋ねた。



「アンタ、アイツを殺しただろ?そして何事も無かったかのようにまた戻ってきた事を知っているか?」



「…なんの事だ?」




アズゴアはゆっくりと消えていった。



開放された6つの魂とフリスクはバリアの部屋の前まで来た。


「あともう少し…」



フリスクはバリアの間の入口に手を伸ばす。



ドクン。


「あ……」


フリスクは倒れた。身体中の力が入らない。どうして。あと少しで帰れるのに。さっきのロードとアズゴア王に浴びせた一撃で殆ど持っていかれてしまったのだろう。


周りの景色はもうぐちゃぐちゃになってしまい正常には見えない。6つの魂はフリスクを囲んで見守っている。



薄れゆく意識の中でフリスクはこう呟いた。



「…シア……ト……」






シアトはふとフリスクに呼ばれた気がして奥へと向かう。今まで言おうと思っていた事を言おうとして。



「なあ、フリ…俺の…本当の名前、シアトじゃないんだ」




「フリ…?」



進んだ先にはフリスクは倒れていた。6つの魂は彼女の周りをクルクルと回っている。


「フリ、なあ、こんな所で倒れてどうするんだ、おい、返事を…」


頬を触って直ぐに離した。冷たい。フリスクは冷たかった。

フリスクの身体から赤い魂と光り輝く決意の光が出てきた。


その魂は彼の頬にくっついて名残惜しそうに離れていく。その決意の光はシアトの小さな鐘に吸い込まれていく。



「フリ…お前は…」


これは、戻れない死というものなのだろうか。普通ならまた何事も無かったかのように戻ってくるはずが、今ここにいて倒れている。



彼は冷たくなったフリスクを抱き上げバリアへ向かう。7つの魂と倒れたアズゴアの魂がバリアに反応しバリアに小さな穴が開いた。それを潜る。



地上に抜けたシアトはその光景に目を見開いた。


地上を綺麗に照らす太陽と、綺麗な太陽には似あわない焼け野原となった地上。彼はフリはここに帰りたかったのかと疑問に思った。いや、煙が立っているからこうなったばかりなのだろう。前はとても綺麗な場所だったのだろう。



「聞こえるか?聞こえなくてもいい、俺はシアトではない。偽りの名前でお前は呼んでいたんだ。俺の本当の名前は…」




その後の言葉は後ろからやってくる他のモンスターの音と風の音で掻き消えた。




「BEWITCHINGFELL」完。

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