「BEWITCHINGFELL」スノーフル編 その1
「第2話 スノーフル編」その1
遺跡から出て、歩く。とても寒いが、大丈夫だ。まだ、見える。
「フリスク…このまま真っ直ぐに進むんだ」
フラウィーの言葉通りに真っ直ぐ進んでいく。フラウィーは少し震えている。やはり寒いのだろう。
バギ…
枝が割れる音が後ろから響く。だが、誰もいない。
また歩く。気の側に誰かがいるような気がしたが振り向いてもいない。
そして前を向く。おかしい。さっきまで誰もいない筈なのに。誰かがいる。
「よお、お前、ニンゲンだろ?こんな所によく来たもんだ。この世界のルールでは挨拶、握手はするもんだぜ」
「や、やめておいた方がいいよ、コイツは…」
フラウィーの制止も聞かず、フリスクは手を伸ばす。だが…
「おっと、手が滑った」
身体が熱い。恐る恐る下を見る。骨が、身体を貫通していた。目の前の存在を見ながらその身体は崩れ落ちた。
ーーーーーーーーーー
目が覚めるとさっき出会ったモンスターがいたところの少し前にいた。と同時に胸が締め付けられるように痛くなる。見える風景も少し歪んでいる。
もしや、死ぬ毎にこんな事が起こるのか?
考えても始まらない。先に進む。
「よお、お前、ニンゲンだろ?こんな所に…」
そいつの言葉を無視して素通りしていく。少し小さな小屋が見える。そして目を疑った。
いるのだ。さっき素通りしたはずなのに。
「ひでぇなニンゲン。オレを無視するなんてよォ。1つ忠告をしておこうと思ったのにな」
そいつはヘラヘラと笑いながら喋る。
スケルトンだった。
「まあ、いい。オレはシアト。見ての通りスケルトンだ、ここの見張りをやってるが、正直退屈でな。そこにお前が現れたというわけだ。」
(それに、コイツは1度殺したのに何故生きてるのか、興味がある)
フリスクは不思議な気持ちになった。他の風景は歪んでいるのに、目の前のスケルトン、シアトだけ。ハッキリと捉える事が出来るのだ。
フリスクは自分の事を話した。
「へぇーお前は慈悲を持ってここから出たいというのか。だがな、この世界は殺るか殺られるかの世界だ。慈悲なんて通用しない」
「そんな事ない!現にトリエルは落ち着きを取り戻したんだ」
フラウィーはシアトに言う。シアトはフラウィーを睨んだ。
「おい糞花、今度また何か言ったら殺すからな」
「だ、ダメだよ!」
フリスクが止めたからかシアトはため息をつく。
「あっ、レーゼが来るな。お前、彼処の岩に隠れてろ」
フリスクはシアトに言われるがまま岩に隠れた。
「よお、兄弟…いや、ボス」
「よおでは無い、お前は何もせずそこにいるんだな…ニンゲンが来たらどうするんだ!?」
現れたのは鋭い目つきをした長身のスケルトンだった。凄く怖い。恐怖で震えている。
「まあいい。とっとと罠を仕掛けて帰るぞ」
「了解、ボス」
シアトはチラッと岩を見るが罠を仕掛ける為に離れる。レーゼは小屋の前に立ったまま動かない。シアトがちゃんと罠を仕掛けるか見張っているのだろう。
「…寒い…」
「…なんだ?どこにいる…出てこい!」
マズイ。ボソッと呟いた声だったが気づかれた。仕方ないとフラウィーを隠して出る。
しかし。
「あ…ダメ…嫌だ…おかしく見える…」
シアトは見えているのにトリエルの時と同じくまた酷い幻覚に襲われた。ボスと呼ばれたモンスターは目を鋭く光らせ近づく。
「誰だ貴様は。随分汚い格好だな。」
恐怖で身体が動かなかった。涙が溢れて止まらない。
「とりあえず、殺すか」
その言葉を聞き終わる頃には身体には無数の鋭い骨が。
「…ぁぐ…!」
それから何回も身体を貫かれた。その度に酷い幻覚がフリスクを襲う。
どうして自分の目は正常に働いてくれないのだろう。
この幻覚は、何故起こっているのだろう。
そんなことを考える内に気づいたらまた同じ場所にいた。
また、殺される。そう思った。
「コイツは殺してもボスのストレス発散にならないぞ、やめとけ」
いつの間にか戻ってきたシアトが攻撃を止めた。
「貴様、ソイツを庇うのか。」
「いや、違うぜボス。コイツは俺の獲物だ。誰にも渡さないって事よ」
シアトの目は赤い。いつも光らせていたが今一際輝いていた。
「…だ、大丈夫だよ、その…ありがとう、だから…話を…」
シアトはバッとフリスクの肩を掴む。
「ダメだ!」
その言葉にフリスクは驚き意識を飛ばしてしまった。その証拠にかくんと頭が垂れる。シアトは流石に焦る。ボスは2人を見下し帰っていく。シアトもフリスクを抱えて後を追った。