「BEWITCHINGFELL」後日談
フリがいなくなって数日が経った。ボスは相変わらずアンダインと喧嘩してるしアルフィーは何してるのか分からない。トリィは変わらず皿洗いをしているがその心は穏やかでは無いはずだ。アズゴアは慣れない仕草で草抜きをしている。
フラウィもアズゴアを手伝っていた。
フリがいなくても起こっていた日常のはずだった。なのに、なんだろうな。ソウルが苦しい。フリがいなくなったのがこんなにも辛かったなんて。あの時の動かなくなったフリは…笑っていたようにも悲しそうにも見えた。
慈悲を示したフリによって多少は殺伐としてはない。
そして彼女の決意が宿った俺の鐘はあれから静かに光っている。
そしてまた今日もお墓参り。夕陽がよく見える丘の上に立てられたお墓。墓標には「FRISK」という文字が。
「今日もきたぜ、フリ。お前がいなくなって、俺は変な気持ちが拭えないみたいだ。…もっと早く気づいていればよかった。殺伐としたあの世界はお前がやって来てから随分丸くなっちまったもんだ。」
そう言うと彼は墓にトリエルが作った花の冠を乗せた。夕焼けの光によって花の冠と墓は山吹色に光る。
辺りが薄暗くなる。彼は戻ろうと振り返った。
「フリ…?」
少し遠くの場所でフリスクが、笑顔で立っているのだ。彼は思わず駆け出した。フリスクは後ろへ向き歩いていく。
「フリ!待て!俺だ!……だ!」
彼は走るのは少し苦手だったが今回はそうは言ってはいられなかった。
追いついた。彼は確信し手を掴む。
掴んだ筈だった。
「…?」
掴んだのは、空虚だった。
「なんだ…?…俺も、フリと同じように幻惑を見てしまったというのか…?」
彼は墓を見つめた。
「フリ、近くにいるのか?」
(ここにいるよ…)
「…!」
風が、そう言ったように聞こえた。
「ハハ…ダメだな俺は」
彼は自身を嘲笑しながら戻る。
(…)
(…もし…)
(もし、フリが持っていた「決意」というやつがまだ残っているなら)
「どうしたいの?」
「!」
振り返るとフリスクに似ている子供が立っていた。また一瞬驚いたが、違う服を着ているしあんなにも不気味な笑みは浮かべてはいないと思いその考えは捨てた。
「あの子は違う世界のキミから受けた呪いを背負って歩き続けた。君の望みは分かっているつもりさ、キミたちがいるこの世界は私が作った箱庭だからね」
「は?てめぇ誰だ?何を言っている」
クスクスと笑いながら人間は答える。
「モンスターと仲良くなった筈だった違う世界の彼女が彼等を殺戮した結果受けた幻惑という呪いは決意をすると同時に酷くなり更に死ねば死ぬ程寿命を縮めてしまう、極めて恐ろしいものだ。」
「私は彼女を哀れだと思ったよ。そして申し訳ないと思っている。今ここを見ている者によって本来ならなかったものを背負わなくてはならなかったのだから。」
「そして、君は彼女に会いたいと願っている。違うか?」
シアトは頷く。人間はやはりと言わんばかりの目を向ける。
「取引をしようか。彼女に会わせてあげよう。ただし、君は1つあるものを犠牲にしないといけない」
「なんだと…?何を犠牲にすればフリに会えるんだ!?」
「落ち着きたまえ。そうだな…彼女は呪いから解放されるがその呪いは君が背負うという事だ」
「呪いを俺に移す…と?」
人間は頷く。それを見た彼は口を開け答えた。
「俺は…」
それから数ヵ月後。
暗い暗い闇の底で
1人の人間が、目覚めた。
「BEWITCHINGFELL」後日談 完